「Twilight」はTENDREとの共作。70年代のスライ&ザ・ファミリー・ストーン風のグルーヴやAOR的テイストのサウンドをバックに、切ない歌声を聴かせる。「Cheek to Cheek」は、打ち込みではなく“生”なゆったりとしたバンド・サウンド。ラップを織り交ぜたCharaの歌の説得力、“真っ直ぐに生きて 傷つくの好きよ”という歌詞にひかれる。
「Cat」の歌いぶりは年相応の落ち着いたたたずまい。“愛を身籠もれば”という歌詞が登場する。「赤いリンゴ」はChara自身が制作を手がけた。HIMIがギターで参加。秘めた恋心を明かした切ないラヴ・ソングだ。SWING―Oとの共作「Everybody Look」ではプリンスへの敬愛ぶりがうかがえる。
アルバムを締めくくる「小さな愛の工場」は、自身の足跡を踏まえたステートメント・ソング。“私は美しい物をほお張りたいだけ 光と影を 味方につけて”というつぶやきが大きな余韻を残す。
若いミュージック・クリエーターに刺激され、渡り合いながら、“息子たち”のような彼らをしっかりと受け止める“母”としての包容力。これまでありのままの自分をさらけ出してきた彼女が、本作では甘さだけでなく深みを増したウィスパー・ヴォイスを聴かせる。これまでの歩みへの自負、誇りを秘めつつ、今、あるがままの姿、新たな一歩への意欲を物語る傑作だ。(音楽評論家・小倉エージ)