このホリスティックな見方につながるのが「免疫年齢」という考え方です。免疫年齢では個別の臓器ではなく、体全体にかかわる免疫系の活力が問われます。免疫年齢が若くて免疫系が頑強な人は、がんのリスクがあってもそれを回避できるのです。

 逆に実年齢が若くて健康そうに見える人でも、免疫年齢がそれに伴わなければ、がんのリスクに負けてしまいます。

 私はこの免疫年齢を若々しく保つためには、心の「ときめき」が必要だと主張してきました。ときめきにより生命のエネルギーが高まり、それが免疫系の維持強化につながるのです。

 ところが、この本の著者であるシュワルツたちはもっと踏み込んだ考え方をしています。

「私たちはみずからの研究にもとづき、高齢者の患者が老年科医のもとに年に一度は訪れ、精神を健康に保つために免疫向上剤を注射してもらう、という未来像を描いている」

 シュワルツたちは免疫系が「不老不死の妙薬」だと気づき、「現在は、脳の境界における脳と免疫のコミュニケーションを回復させるような老化防止・免疫向上治療の開発に取り組んでいる」というのです。

 この分野の研究開発の進展を期待したいものです。

週刊朝日  2019年1月18日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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