大阪で工場勤務しているYさんは、金融機関から送られてくる書類が届くたびに「心臓が止まる思いです」と話す。金融機関の書類を前に手が震えている。
「相続なんてするんやなかった」と後悔の日々だ。
Yさんの父は、大阪で長く上場会社に勤務。定年まで勤め上げて、退職後も妻に先立たれたが、悠々自適の生活だった。
そして3年前に父は死亡。自宅や預金などは、一人息子のYさんが相続した。
それから8カ月ほどしてからある金融機関から、手紙が届いた。
「督促状とあり、金を返済せよと通知してきた。父の名前も書いてあるが、借りた覚えのないもので、手違いかと金融機関に問い合わせると、借金があるという。あわてて会社を早退して、金融機関に出向きました」
父は実弟がかつて事業をしており、実弟のために4千万円の融資を受けたのだという。当初、実弟が借金の返済をしていたが父より先に死亡。
その後、父が年金から、金利だけを返済していたというのだ。その残額の返済を相続人のYさんに求めてきたのである。
「父は心臓病で急死。病院で『迷惑かけるかも……』とつぶやいていた。それがこの借金のことだったのかと気付いた」(Yさん)
父が亡くなり半年が過ぎ、その間は一円も返済がされていない。遅延損害金も含め、2500万円ほどの残債があるとわかった。
相続した父の遺産は、自身が購入していた自宅ローンの支払いの一部に充当するなどして、ほとんどが消えていた。全額返済できる余裕はなく、途方に暮れるYさん。
すると、数カ月後に金融機関は返済の意思がないと、自宅の競売を申し立てた。
「自宅を取られるとなれば、路頭に迷う。知り合いのツテで弁護士を紹介してもらい金融機関と交渉。返済の意思を示して競売を取り下げてもらった」
その後、会社員のYさんは給料から、当面月5万円ほどを返済に充てることで、金融機関に了解してもらった。だが、借金の残金からみれば、完済は程遠い。