劇団「大人計画」主宰の松尾スズキさん。多数の作、演出、出演を務めるほか、小説などの執筆活動や映画監督など、幅広く活躍されています。30周年を迎える劇団への思いに作家の林真理子さんが迫ります。
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林:はじめまして。松尾さん、お洋服いつもこんな感じですか?
松尾:いや、今日はいつもよりはちょっと……。
林:ですよね。いつもはわりととがった感じですもんね。松尾さんが主宰なさってる劇団、「大人計画」って、阿部サダヲさんとか宮藤官九郎さんとか、超売れっ子を輩出なさってますよね。
松尾:周りばかりが有名になって、本体はそんなにですけど(笑)。
林:いえいえ。阿部サダヲさんがブレークする前、ここに出ていただき、失礼ですけど、この人が大河ドラマ(「いだてん~東京オリムピック噺~」2019年)の主役をやるとは思ってもみなかったですよ。
松尾:アハハハ。(脚本の)宮藤との合わせ技がなしたことだと思いますけどね。
林:大河は、松尾さんもお出になるんでしょう?
松尾:ええ、僕もチラッと出させていただきます。
林:すごいですね。「大人計画」がジワジワといちばんメジャーなところを席巻しようとしている感じがしますよ。
松尾:席巻しようとしてるわけではないですけど(笑)、それは宮藤君の需要だと思いますよ。
林:阿部さんや宮藤さんはじめ、皆さんが若いころ、松尾さんは「こいつはイケるな」というのがわかってたんですか。
松尾:最初から「すごい才能があるな」と思ったのは阿部、荒川(良々)ぐらいですね。あとはやっていく中で「こいつ、気の利いた演技するな」と思ったりね。笑いの芝居って一朝一夕にはなかなかできなくて、人前で「すべる」という経験をしないと、こうすれば笑うという力学がなかなか体の中に生まれないものなんですね。得手不得手もあるだろうし。
林:はい。
松尾:やっぱり場数というのがあって、本人がウケなくても、周りの人間を見て「こうしたらウケるんだ」と学ぶこともあるし、そういう中でみんな10年以上かけて育っていったということだと思いますね。