鹿子の叫びを聞いた加賀屋先生、いきなり廊下で壁ドーン。「さっきのはそそられた」と囁いて、そのままホテルのスイートルームに、彼女をお持ち帰り。

 ワインとディナーを用意して、さぁ打ち合わせだと手を握る。先生の書く恋愛小説が読みたいと、鹿子が言えば、「どんな恋がしたい? 目を閉じて、想像して」と、手首をツツーッ。

「物語を作る時に大事なのは想像。そして、想像を駆り立てるリビドー……」

 リビドー、それは抑えきれない性的欲求のこと。官能小説家かと思いきや、ミステリー作家の加賀屋先生。トリック考えるたびにムラムラしてたら、身がもたないよ。

「もっと理性の飛ぶような恋をしないと」と、鹿子の指を舐めあげる先生。こんな打ち合わせあるかーい!

 その後、酔ってつぶれた鹿子が目覚めると、下着姿で、あら大変。隣には裸の加賀屋先生が……。という、いわゆる朝チュン(夜から朝へ、スズメの鳴き声で場面転換。暗に事後をほのめかす)展開。

 もちろん未遂だ。未遂じゃないとタイトル詐欺だ。しかし、文学処女のリビドーを寸止めしつつ、指をしゃぶって書き上げた恋愛小説なんて、読みたいか?

週刊朝日  2018年10月5日号

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カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など。

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