■女性ゆえのハンディは「まったく感じない」
そのため、自身が出産するまで、女性ゆえのハンディは「まったく感じなかった」といいます。30代後半で双子を出産しますが、わずか4カ月で復職。その歩みを止めることはありませんでした。
「遅い出産でしたし、そのころには下に若手がたくさん育っていて、私が直接関わる緊急の呼び出しもめったにありませんでした。なんとか乗り切れた、という印象です」
時短勤務や当直免除、ワークシェアや病児保育など、女性医師の子育てをサポートする環境は近年整いつつあります。明石医師が働く現在の医局も、24人中19人が20~40代の女性乳腺外科医で、ママドクターも多く在籍しています。
「乳腺外科は術後トラブルや急変が比較的少なく、外科のなかでも女性医師が働きやすい診療科だと思います。子どもの発熱などで保育園から急な呼び出しがあっても、マンパワーでやりくりできています」
■女性医師も、トップランナーであるべき
明石医師が役員を務める「日本女性外科医会」の指針のひとつが「医学生、女性を含む医師全体、医学界および社会に対する女性外科医師支援に関する教育啓発活動や提言」です。
明石医師は設立の母体となった委員会から携わり、メンター制度の普及活動、若手のコーチングや英語論文の指導、育児と仕事の両立を目指す勉強会など、後進の育成にも力を注いできました。
「女性医師が担当した患者の死亡率が、男性医師よりも有意に低かったというカナダ・トロント大学のデータもあります。女性ならではのこまやかな気配りが、術後の経過にもよい影響を与えるのかもしれません。女性医師も、本来はトップランナーであるべきだ、と思っています」
外科医の志望者は減少傾向にあり、男性では30~40代の減少も顕著になっていますが、女性外科医は微増中。貴重な人材の妊娠・育児への対応に、現場も試行錯誤しています。
「妊娠・育児中は長時間の手術には入れないなど、女性医師に配慮しているつもりが、やりがいのある仕事を与えていないことになる場合も多いのです」