現在76億人の世界の人口は、2050年には100億人に迫る勢いで急増中だ。人口爆発による食糧危機を救う手段として、国連食糧農業機関(FAO)が推奨しているのが、昆虫食だ。世界各地で貴重なタンパク源となっていることから、いまやムシできない存在となっているのである。
とはいえ、日本では長野県などで古くから食されてきたイナゴや蜂の幼虫などを除いて、昆虫食はゲテモノ扱い。ところが、最近はそのおいしさに本気で魅せられた人も増えてきているとか。半信半疑で昆虫食を提供する飲食店を取材した。
東京・高田馬場の居酒屋「米とサーカス」。通常メニューとしてタガメの塩漬けやコオロギを素揚げした「昆虫6種食べ比べ」など3品を提供している。もともとジビエ料理を提供する居酒屋としてオープンしたが、「環境への負荷が少ない食材」として昆虫に注目し、2年前から提供を始めた。
記者がおっかなびっくりコオロギなどを食べていると、女性客(30歳)が1人ふらりと来店した。
カウンターで隣り合わせになったその女性は、慣れた様子で「セミの親子串揚げ」を注文。串に刺さった成虫と幼虫が素揚げされて出てきた。サナギの抜け殻も添えられ、串一本でセミの一生を描いているようだ。
セミの幼虫といえば、最近、埼玉県川口市の公園で「食用を目的とした捕獲はやめてください」と書かれた看板が掲示され、話題になったばかり。目撃談によると「ペットボトルいっぱいに入れていた」とか。セミの幼虫は中国や東南アジアでは好んで食べられている食材だ。
そんなにおいしいのだろうか。女性に尋ねてみると、こう答えた。
「去年初めて食べて、セミの幼虫の高級なナッツのような味が忘れられなく。昆虫料理で元気になりたいなと思って来ちゃうんですが、友だちには理解されなくて(笑)」
なるほど。だから1人で。女性は自宅でも昆虫料理に挑戦しているそうで、パウチに入ったサソリをインターネットで購入している。サソリは中国やタイなどで食用にされているようだが、素揚げするとエビの尻尾のような味になるという。