シャトー・メルシャンでチーフ・ワインメーカーを務める安蔵光弘氏(メルシャン提供)
シャトー・メルシャンでチーフ・ワインメーカーを務める安蔵光弘氏(メルシャン提供)
映画「ウスケボーイズ」(10月20日より上映)のモデルとなった「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー」(メルシャン提供)
映画「ウスケボーイズ」(10月20日より上映)のモデルとなった「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー」(メルシャン提供)

「日本ワイン」の快進撃が続いている。日本のワイン市場はここ10年で1.5倍に拡大し、中でも日本で栽培したブドウだけを使った「日本ワイン」は、生産が追い付かないほど人気がある。日本ワインは市場の約5パーセントのシェア率で、希少価値が高く、注目株だという。

 この人気にさらに火をつけると予想されているのが、マドリード国際映画祭2018にて最優秀外国語映画作品賞を受賞した映画「ウスケボーイズ」だ。

 俳優・渡辺謙の息子、渡辺大が最優秀外国映画主演男優賞を受賞したことでも話題になった。映画監督の柿崎ゆうじ氏が、日本ワインにベタ惚れしたことから、映画化が決定した。

「日本の気候は、ワイン造りに適していない」

 こうした常識を破ってきた「シャトー・メルシャン 桔梗ヶ原メルロー」は、「現代日本ワインの父」と称され、映画のモデルにもなった故・浅井昭吾氏が手がけたワインだ。

 1985 年産の初ヴィンテージの誕生以来、日本を代表する赤ワインの一つとして評価されてきた。華やかな香りが時間とともに広がり、繊細な味わいの中に厚みと力強さを感じさせるワインで、第16回目となる「日本ワインコンクール」で金賞を受賞した。そんな浅井氏に大きな影響を受け、現在もワイン造りに情熱を捧げているのが、シャトー・メルシャンでチーフ・ワインメーカーを務める安蔵光弘氏だ。

 安蔵氏は、日本ワインコンクールの存在が、日本ワインが伸び続けてきた理由の一つだという。

「70年代以前の日本ワインは欧米に比べて品質が劣っていました。まるでキャンディのような甘口なワインばかりで、食事に合うものではありませんでした。2000年代に、ワインコンクールが導入されたことで、生産者たちは試行錯誤を繰り返すようになりました受賞したワインは、品質が保証され、一定の評価を得られるからです」

 2010年代、世界のワインスタイルは、濃厚な力強さから、繊細さ・優雅さ・上品さを求める「フィネス、バランス、エレガンス」へと回帰していったという。そうした潮流の変化をいち早く捉え、シャトー・メルシャンは2000年代はじめから、「フィネス&エレガンス」、つまり「調和のとれた上品な味わい」を目指し、産地のブドウの個性を生かす、優しく丁寧な醸造によるワイン造りを心がけてきた。

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「満足できないものは出せない」