「日本ワインの特徴は、優しい口当たりです。今回金賞を受賞した桔梗ヶ原メルロー14年は、フレッシュな酸が残って優しい味になっています。ブドウ造りからこだわり、品質を維持しています」

 しかし、生産には苦労もあった。

「2016年は今でも忘れられません。夏の天候が理想的で、皆で、『これはビッグヴィンテージになるぞ』と話していました。その期待は一転、台風が3つ発生し、全て上陸してしまったのです。ブドウは大きなダメージを受けました。ブドウの選果を徹底的に行い、なんとか乗り越えましたが、例年の2倍は働いたにも関わらず、評価は働いたほどではなかったです(笑)」

「満足できないものは出せない」というプレッシャーと闘いながら、毎日、ブドウと向き合ってきた安蔵氏。シャトー・メルシャンは「日本らしい味わい」と海外からも高く評価されている。

「桔梗ヶ原メルローは、外国の高級ワインと同じ方向を向いていません。我々がそうしたワインとそっくりなものをつくったら、日本ワインの意味がありません」

 シャトー・メルシャンはこの秋に新しくワイナリーをオープン予定、さらに来年秋にももう1つワイナリーを設立する。

「今は、全体の5%、つまり20本に1本しかなく、『日本ワインを飲んだことがない』と耳にすることもあります。一度飲んでもらえば、リピーターになってもらう自信はありますが、さらに、日本ならではの味を追求し、完成度を追い求めていきます」

 東京五輪に向けて、「もっと美味しいワインを作れるように頑張りたい」と安蔵氏。人気がますます増えていく「日本ワイン」から目が離せない。(本誌・田中将介)

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