「注射が嫌、仕事上、できるだけ通院を減らしたいといった、患者さんの好みやライフスタイルに合わせて、有効な薬剤を使えるようになってきたといえます」(同)

 ただし、両剤とも発売開始から日が浅く、まだ市販後全例調査の期間中であり、有効性・安全性はまだ「仮免許」の段階。処方の期間も限られているため、ある程度の通院も必要である。針谷医師は自身の処方も含めて次のように指摘する。

「現在、JAK阻害薬が処方されているのは大きく二つのケースです。生物学的製剤でも十分な効果が得られず、新薬の登場を心待ちにしていた人と、ほかにも使える薬剤はあるものの、注射は苦手などの理由で自ら処方を希望した人です」

■薬の飲み合わせや「帯状疱疹」に注意

 MTX、生物学的製剤、JAK阻害薬はいずれも免疫を抑える薬剤である。標的とするのは、患者自身の関節を攻撃している「暴走」した免疫だが、正常な免疫の作用低下も避けられない。

 このため、これらの薬剤の使用中はさまざまな感染症の予防が欠かせない。インフルエンザや肺炎など、予防接種が可能な感染症には、積極的な活用が求められている。竹内医師は、

「JAK阻害薬では当初、悪性腫瘍の頻度を高めるともいわれていましたが、今のところそれは否定されています。ただし、理由ははっきりしませんが帯状疱疹のリスクを高めるのは明らかです」

 と話し、予防接種の活用を含む帯状疱疹対策の重要性を指摘する。

 竹内医師は、ほかの持病の処方薬との飲み合わせにも注意が必要だと訴える。

「例えばトファシチニブは肝臓、バリシチニブは腎臓で代謝されます。このため肝臓や腎臓の機能が低下していたり、機能を抑える薬を使っていたりする場合はこれらのJAK阻害薬の用量調節が必要です」

 今後、市販後調査の結果を受けてJAK阻害薬の使用が広がるものとみられている。

慶応義塾大学病院リウマチ・膠原病内科教授
竹内 勤医師

◯東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター特任教授
針谷正祥医師

(文/近藤昭彦)

週刊朝日 8月17-24日号

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