また、2015年のある大会だったという。山根氏のお気に入りの選手が序盤から劣勢。どう見ても勝ち目がない展開だった。

 いくら、山根氏の「お抱え」の審判でも、勝たせるのは無理だったという。

「実質的にダウンしているのに、レフェリーがダウンをとらない。そして、本部に座っていた山根氏が『こら!』『どうなってんだ』とか騒ぎ始めた。レフェリーは、山根氏のお気に入りの選手を勝たせるため、この試合の担当になっていた。山根氏がにらみを利かせているので、ダウンがとれない。しかし、あまりの一方的な展開で、最後は仕方なしに山根氏のお気に入りの選手側の監督が、タオルを投げ込み、試合終了。あまりにひどい、レフェリーの裁き。試合後、腹が立って、文句を言った関係者がいたそうです。そこまでして山根氏のお気に入りを勝たせたいのかと。すると、レフェリーは『しょうがないじゃないですか』『反抗できませんよ』とか言って、山根氏の介入を認めたそうです」(Aさん)

 過去に山根氏のお気に入りを勝たせなかった審判は試合後、呼びつけられて恫喝されることもあったという。

「私が見たのは、山根氏が日本ボクシング連盟のとりまきの幹部に審判を呼びにいかせ、10人くらいで取り囲んで『なんや、あのジャッジは』『お前、ええ加減にしろ』などとヤクザのような口調で、罵詈雑言を浴びせていました。だから、奈良県とやるときは、絶対に完璧にノックアウトしないと勝てないというのが、アマチュアボクシング界の鉄則です。山根氏の強権で試合の勝敗が決まるので、アホらしいからと、アマチュアボクシングに見切りをつけて、優秀な人材がプロに転向していった」

 2012年ロンドン五輪男子ボクシングミドル級金メダリストでWBA世界同級王者の村田諒太(32)=帝拳=は自身の公式フェイスブックを更新し、山根会長を痛烈に批判した。

<そろそろ潔く辞めましょう、悪しき古き人間達、もうそういう時代じゃありません 新しい世代に交代して、これ以上、自分達の顔に泥を塗り続けることは避けるべきです>

 山根氏は活躍した選手らに対し、あるフレーズを使うことを強要していたという。

「五輪などで好成績をあげた選手は必ず、『山根会長のおかげでメダルがとれました』と言っていますよ。厳命され、言わされているのは、アマチュアボクシング界では有名な話。つい言い忘れた選手を連盟幹部が『こら、なんで会長のおかげでと言わないんや』とこっぴどく叱ることもありました」

 山根会長はこの騒動をどう収拾させるのか。(今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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