実は、オウムの在家信者が社長を務める非破壊検査会社(95年5月末で解散)があって、そこがオウム信者を組織的に雇っていたのだ。92年1月から、オウムに強制捜査が入った95年3月まで、80人の信者が検査の助手に雇われた。仕事の大半は化学プラントだったが、Aさんのように原発へ派遣された信者も少なくなかった。

 しかも、Aさんらは、原発の心臓部ともいえる原子炉の格納容器での作業も担当していたのだ。

「ぼくらには正式のIDカードが発行されていたのですが、これさえあれば出入りは自由です。人間の手でボディーチェックされることもありません。警備の目をかいくぐるのは簡単です」

 といって、Aさんは原発内部で撮ったという写真を見せてくれた。一枚の写真には、防護服を着たAさんが写っている。

 口にはガスマスクのようなものをつけ、頭からはフルフェースのヘルメットをかぶっている。原発内では最も放射線被曝の危険があるC区域に立ち入る際の格好だ。

 C区域内で使われる検査器具は、空気を汚染するため持ち出しが禁止され、身につけた服も処分されてしまう。それほど炉心に近い。点検中は原子炉の格納容器の蓋は開けられ、燃料棒を入れたプールもすぐわきにある。

 こんな原発の核心部にまで、Aさんは入り込み、しかも写真まで撮っていた。カメラはチェックをかいくぐって持ち込んだという。そして、

「金属探知機でわからないプラスチック爆弾を隠して持ち込むのは簡単だ。それを炉心近くにセットすることだって、やろうと思えばできた」

 と話すのだ。

 いったい原発施設の警備態勢はどうなっているのか。Aさんの証言によると、福島原発の例でいえば、原発で働く人は一人一枚、顔写真入りのIDカードを持っている。

 原発の敷地は高い塀で囲まれている。敷地に入るには、まず門のところで、このIDカードをセンサーに当てなければいけない。

 建物に入るとき、扉のところでもう一度この手順を繰り返す。ここには、警備員が常時3、4人いるが、

「顔写真と本人を照合されたことはありません。カードさえ手に入れば、本人でなくても自由に出入りできるんですよ」(Aさん)

次のページ
専門家も驚いたオウム信者が持っていた原発極秘資料