次に気にしなければいけないのは、調理法による違いです。EPAもDHAも油成分なので、調理の仕方によって失われる部分が出てきます。ちなみに刺し身で食べるときのDHAを100%とすると、煮物、焼き物で80%、揚げ物で50%に減少するといわれています。だから魚は煮たり焼いたりせずに、刺し身で食べるのが一番なのです。これは私自身の好みにも一致しています。

 さらにEPAもDHAも酸化しやすいので、酸化を防ぐために抗酸化作用のある食品と一緒に食べるとよいといいます。ここで刺し身のつまや薬味を思い出していただきたい。大根、しそ、わさび、わかめと、いずれも抗酸化食品なのです。日本の食文化にある先人の知恵には侮りがたいものがあります。

 これまで、認知症の予防には心のときめき(歓喜)が必要だと書いてきました。私にとって、心のときめきのひとつは、毎日の晩酌です。今日が最後だと思って生きることにしている私は、この晩酌を最後の晩餐だと思っています。まずはよく冷えたビールを一気に飲み干します。そして、晩酌のメインディッシュの双璧は湯豆腐と刺し身です。いさき、かつお、あじといった刺し身があれば、言うことはありません。

 わきあがる晩酌の歓喜とEPA、DHAの相乗効果。これこそが認知症予防です。みなさんも、刺し身を大いに食べましょう。

週刊朝日 2018年7月6日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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