「グランパ!」
吉本の芸人でなくとも、「あんたがグランパかい!」と突っ込みを入れたくなる一瞬であった。
じゃあ、そういうお前は昭和君に英語を仕込もうとか、算数を教え込もうとかしていないのかと問われたら、ご多分に漏れず、コソコソやっているんである。
「オレンジジュースって、本当はオーレンジューだからね。オーレンジュー。ほれ、言ってみ?」
などと、事あるごとに昭和君に無理強いをしている。
先日、大センセイ一家行きつけの「ブラッスリーほっぺ」という洋食屋さんに行ったときのことである。
この店のシェフの大森さんは、見かけは怖いけど作る料理はとてもまろやかで、特にビーフシチューがおいしい。一方、ホールを切り盛りするマネジャーのさゆりさんは、見ためも中身も優しい人で、いつも昭和君によくしてくれる。
この日も名物のビーフシチューを注文すると、さゆりさんが声をかけてくれた。
「昭和君、ジュースは二種類あるんだけど、オレンジジュースとりんごジュース、どっちがいい?」
昭和君はどちらも大好きだ。彼の顔に苦悶の表情が浮かんだ。
「オ、オ、オーレン、オーレンゴジュース!」
英才教育って、やっぱりちょっと滑稽だな。
※週刊朝日 2018年5月4-11日合併号