現代思想学者で明治大学非常勤講師の関修さんは、
「宇野選手は、他人の目ではなく、自分が気持ちよくスケートできているか、そこを追求していく。そのぶん何を発言するかわからず、見ていてハラハラするところがあり、なんとかしてあげたいと思ってしまうタイプ」
と分析。スケーティングの見せ方にもそれは表れると関さんは言う。
「宇野選手は、自分がやってみたいなと思うことを、一つひとつパーフェクトにやってみたくなる。宇野選手には、オリンピックだからという思いよりも、そのときに自分の滑りたい滑りができたかどうかが大事」
確かに、宇野にとってのオリンピックは、一つの試合でしかなかったように見える。銀メダルという結果を残した後でも、
「メダルを忘れ去って、次の試合に臨みたい」
とまで答えている。
宇野と対照的なのが、66年ぶりの2連覇を成し遂げた“絶対王者”羽生結弦だ。自らの言動で追い込み、奮い立たせるタイプ。
「王者になる。まずそうして口に出して、自分の言葉にガーッと追いつけばいい」
「期待されてる感覚が好き。それはプレッシャーじゃなくて快感なんです」
と過去には語っていた。今回のショートプログラムを終えた時点の回答にもそれは表れていた。
「とにかくやるべきことはやってきましたし、2カ月間滑れなかった間も、とにかく努力をし続けました。その努力をしっかり結果として出したい」
金メダル獲得後、直前の心境をこう振り返った。
「19歳の時にオリンピックを経験した時とは違い、自分の時間が限られているというのを感じていて、今回は勝たねばと思っていました」
「練習でジャンプが決まらないことで緊張感が戻ってきて、背中をポンと押されたような感じでした」
これらの発言は、宇野とは対照的に、五輪の持つ特別な重さを感じてきた証しでもある。前出のカトリーヌさんはこう語る。
「羽生くんは、常にオリンピック王者として自問自答しているような印象があります。王者としての意識がすごく高い系。そしてそれをやりとげちゃう精神力、集中力は本当にすごい」
カトリーヌさんが羽生にかかっていた重圧を感じたのは、メダリスト会見で羽生が発した、「しゃべればしゃべるほど嫌われるし、いろんなこと書かれるし」という一言だった。