羽生結弦(右)と宇野昌磨
羽生結弦(右)と宇野昌磨
12歳時の宇野。メダリストになった今も当時のあどけなさを残したままだ
12歳時の宇野。メダリストになった今も当時のあどけなさを残したままだ

「あぶね~~」

【可愛すぎる!12歳時の宇野昌磨の写真はこちら】

 フリーの演技の際、最初の4回転ジャンプの着地に失敗、転倒した。滑走を終え開口一番、宇野昌磨が発した言葉だ。銀メダルが確定した後でもこんな発言が飛び出した。

「この後表彰式あるんですか? やっぱり特別な思いはなかったですね、最後まで」

 感動的なコメントを期待していたテレビの前の視聴者は肩透かしを食らったことだろう。さらに秀逸なのがその後のテレビ番組のインタビュー。冒頭のループジャンプ失敗を振り返って、

「もう、笑えてきました。あまりにも早すぎる失敗だったので」

 と語り、今したいことを聞かれると「寝たい」と答えた。翌日の会見でも眠そうで、英訳中ついに、子どものようにウトウト……。

 それまでの五輪代表が背負う重圧をまるで感じさせない宇野。だが、その“ゆるさ”がかえって新鮮だったか。ふわふわとした雰囲気と天然発言に「なんだか癒やされる」「完全に宇野派になった!」と、これまでフィギュアスケートにそれほど関心が高くなかった人たちのハートまでもがっちりつかんだようなのだ。

 五輪でにわかに世間の注目を集める宇野の言動だが、その異次元ぶりは以前から際立っていた。過去の発言をいくつかピックアップしてみると……。

「(一番つらいのは)野菜を食べている時。(特に嫌いな野菜は)多すぎて答えられません」(テレビ番組のQ&Aから)
「観光って何をするんですか?」
「(ヘアスタイルについて)これがパーマなのかどうかもわからない」
「(2017年の世界選手権銀メダルについて)たまたま」
「勉強はやっておけば、もう少しマシな頭になっていたと思いますけど」
「ピョンチャンって韓国なんですか?」

 五輪前に心配なことを聞かれた際には、大好きなゲームをやるためのWi−Fi環境が整っているのかどうかが気がかりだと語った。

 圧倒的マイペース、驚異の平常心。テレビ朝日の五輪番組でメインキャスターを務めた松岡修造は、そんな宇野のことを、“宇脳昌磨”と命名した。

 本誌で「てれてれテレビ」を連載するコラムニストのカトリーヌあやこさんは「おもしろいと思わずに無意識におもしろいことを言う。天然の無意識系ですね、いじりがいがあるというのか。上田晋也さんや又吉直樹さんら、芸人さんがインタビューするときも、宇野くんにワクワクしているように見えますね」

 と見ている。

著者プロフィールを見る
上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

上田耕司の記事一覧はこちら
著者プロフィールを見る
松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

松岡かすみの記事一覧はこちら
次のページ