帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「死を生きる」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
冬は体をあたためすぎてはいけない(※写真はイメージ)冬は体をあたためすぎてはいけない(※写真はイメージ)
 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。貝原益軒の『養生訓』を元に自身の“養生訓”を明かす。

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【帯津良一の貝原益軒養生訓】(巻第六の19)
冬は、天地の陽気とぢかくれ、
人の血気おさまる時也。心気を閑(しずか)にし、
おさめて保つべし。あたため過(すご)して陽気を発し、
泄(もら)すべからず。

 養生訓では、春夏秋冬、季節ごとの養生について語っています。

 春はこんな具合です。「春は陽気が発生し、冬に閉ざされていたのにかわり、人の肌がやわらかくなり、表面がようやく開く。ところが、余寒なお厳しく、風邪をひきやすい。気をつけて風寒に当たらず、風邪や咳の患いにならないようにすべきである」(巻第六の12)

 夏については、飲食に気をつけろと説いています。

「夏は伏陰(ふくいん)といって、陰気がかくれて腹のなかにあるから、食物の消化がおそい。多くを飲食してはいけない。温かなものを食べて、脾胃(ひい)をあたためるべきである。冷水を飲んではいけない。生の冷たいものはすべてよくない」(巻第六の13)

 さらにこう続きます。「四季のなかで、夏はもっとも保養すべきである。霍乱(かくらん=日射病)・中暑(ちゅうしょ=暑気あたり)・傷食(しょうしょく=食べすぎ)・泄瀉(せっしゅ=下痢)・瘧痢(ぎゃくい=熱性の下痢)といった病にかかりやすい」(巻第六の15)

 秋は秋風に気をつけろと言っています。「7、8月に残暑が厳しければ、夏に開いた皮膚が開いたままで、秋になってもそう理(そうり=皮膚にある膜)がまだ閉じていない。表面がまだ堅くないのに秋風がやってくると、きずつきやすい。用心して涼風にあたりすぎないようにすべきである」(巻第六の18)

 さて冬ですが、寒くても、体をあたためすぎてはいけないと言うのです。「冬は天地の陽気が閉じかくれて、人の血気(血のはたらき)がおさまるときである。心気(心臓のはたらき)を落ちつけて、血気を体内におさめて保っておくのがいい。あたためすぎて、陽気を発して外にもらしてはいけない。のぼせさせてはいけない。衣服をあたためるのも、少しでいい。熱いのはいけない。厚着や火気で体をあたためすぎてはいけない。熱い湯に入ってはいけない。労働して汗を流し、陽気をもらしてはいけない」(巻第六の19)

 
 さらにこう語っています。「冬至には、初めて陽気が生じる。初めての陽気であるから大切にしなければならない。この際、静養すべきであって、労働はしないほうがいい」(巻第六の20)

 冬至の日は北半球では、正午の太陽の高度が一年中で最も低くなり、昼が最も短い。この「冬至」は中国の戦国時代(紀元前403年~同221年)に季節を区分する方法として考案された二十四節気の名称の一つです。冬至、夏至、春分、秋分、立春、立夏、立秋、立冬などがあります。

 養生訓ではこのうち特に冬至を取り上げて語っています。冬至のことを「一陽来復(いちようらいふく)」とも言います。陰が陽に返るという意味で、すでに述べた(12月22日号)陰陽学説では、冬至まで陰が極まり、そこから転じて陽が生じ始めると考えるのです。養生のうえでは、一年のなかで重要な日です。

 私は冬至が過ぎて、春に向けて一日一日、日が伸びていく季節が大好きです。みなさんも、「陽」の高まりを感じながら、日々を過ごしてみてください。

週刊朝日 2018年1月19日号