加計学園の加計孝太郎理事長は安倍首相と親しい。学園の獣医学部新設には、【1】学部新設の前提となる4条件を満たしたのか【2】愛媛県と同県今治市が国家戦略特区に正式提案する前に加計学園側が首相官邸を訪問していた【3】特区諮問会議が、同じく獣医学部新設をめざす京都産業大学に不利な条件を出した──など、いくつもの不審点が残る。
しかも、前川さんによれば、官邸や内閣府から文科省には三つのルートで「総理のご意向」として来春開学に間に合わせるよう“圧力”がかけられていた。
前川さんはたった独りで「ご意向」に背く証言を繰り返した。反論する勇気はどれほどだったか。
「身の危険は感じませんでしたが、出会い系バー通いを読売新聞に書かれたときは、官邸が裏で糸を引いていると思いました。『加計のことを話すな』という脅迫のメッセージだろうと」
■「行政の私物化」首相窮地で解散
政府側は野党やマスコミの追及をはぐらかすような答弁を繰り返した。
「行政の私物化の実態を隠すため、まともに答えない。文書も記憶もあったに違いないのに『ない』と言う」(前川さん)
安倍首相の口からも、矛盾を含む情緒的な言葉が繰り出された。窮地を脱しきれず、9月28日に臨時国会を召集し、審議を一切せずに即日、衆院を解散した。
前川さんは明言する。
「解散には森友・加計問題をロンダリングする意図があった」
当初は自民圧勝とみられたが、小池百合子都知事の参戦で情勢は二転三転。希望の党の代表となった小池知事は一瞬“国盗り”に成功しそうな勢いだったが、たちまち失速してしまった。
「排除します」
にこやかに発したその一言が命取りとなった。
本誌は12月1日、その言葉の総括を求める意味で、小池知事に尋ねた。
「今年はよい年でしたか、悪い年でしたか」
小池知事は「週刊朝日は、(年内に)まだ何回か出す機会があるでしょう。まだ早いと思います」と前置きしつつ、こう続けた。
「都政は本当に幅広うございます。待機児童対策もそうでありますけれども、一つ一つ重ねていくということで、一歩一歩の前進ができたのではないかなと思っております」
総選挙には触れずじまいだった。
言葉は味方にも敵にもなる。(一部敬称略)
(本誌・上田耕司、太田サトル、松岡かすみ、大塚淳史、吉崎洋夫、秦正理、直木詩帆)
※週刊朝日 2017年12月29日号