無言で九州場所会場を出る貴乃花親方 (c)朝日新聞社
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事情聴取を終えた白鵬 (c)朝日新聞社
事情聴取を終えた白鵬 (c)朝日新聞社

 日馬富士の暴行問題で露わになった貴乃花親方と相撲協会との関係悪化は、モンゴル力士会を率いる大横綱・白鵬との確執も相まって三つ巴の乱戦に。国会中継がかすむほど“ガチンコ”の権力闘争に発展している。来年2月に迫る角界の「総選挙」に備え、敷かれる貴乃花包囲網とは──。

【写真】事情聴取を終え、ホテルを出る白鵬

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「新語・流行語大賞」の選考委員を務めるマンガ家のやくみつるさんが12月1日の授賞式で、日馬富士が引退に追い込まれた暴行事件を引き合いに出し、辛辣に皮肉った。

「『髄液漏れ』とか『万歳三唱』とか、かなりセンセーショナルな言葉が出てきたのに、いささか遅きに失した感があって、すくいきれなかったのが残念です」 その貴ノ岩への暴行問題は解決に向かうどころか、関係者間の遺恨が日を追うごとに深まりつつある。

 中でも急速に悪化しているのが、貴乃花親方と横綱白鵬の関係だ。

 11月28日には八角理事長(元横綱北勝海)による力士たちへの「講話」の場で、白鵬が「貴乃花巡業部長を代えてほしい」と発言。一方、貴乃花親方は白鵬らの「モンゴル力士会」のあり方を、なれ合いにつながりかねないと以前から問題視し、貴ノ岩を参加させてこなかった経緯がある。貴乃花と同世代のある親方が語る。

「白鵬は『貴乃花親方のせいで、力士が混乱して巡業に集中できない』とも話しているそうだ。一方の貴乃花親方は、白鵬が多用する張り手やかちあげ、勝負後のだめ押しなどを『横綱ならそれらしく』と陰で批判。白鵬もそれを知ってか、『自分のほうが優勝回数は多い』『自分の尊敬する双葉山こそ本当の横綱だ』と反旗を翻す。険悪な関係になっています」

 両者の溝を決定的にしたのが、日馬富士の引退だ。29日の引退会見で日馬富士は「弟弟子(貴ノ岩)の未来を思ってしたこと」と、暴行の動機の正当性を強調。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)も報道陣の質問にいら立った様子を見せるなど、当人たちにとって不本意な引退劇だったことを印象付けた。超党派でつくる「大相撲の発展を求める議員連盟」の平沢勝栄衆院議員も、引退のタイミングをこう疑問視する。

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日馬富士が引退を決意したと聞き、白鵬は…