

要所で奇策が功を奏しているラミレス監督率いるDeNA。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、その思い切りの良い戦略に注目する。
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10月26日のドラフト会議では、DeNAが立命館大の東克樹投手を12球団で唯一となる単独指名した。2014年2位の石田、そして15年は今永、16年浜口と大卒左腕を指名して、また左腕。でも、1位候補が不作と言われたドラフトで「単独で獲得できるのは誰か」と冷静に見極めた勝利である。
これはフロントの判断なのか、ラミレス監督の希望なのかはわからないが、ラミレス監督だからこその決断力、思い切りの良さを感じてしまうよね。CSファイナルステージでもそう。今季11勝を挙げている勝ち頭の今永を、先発として十分間隔が空いていけるにもかかわらず、中継ぎに起用した。DeNAはクローザーの山崎康を中心に右の救援投手が多い中で、バランスを生んだ。
救援投手の左右のバランスは、思っている以上に重要だ。特に短期決戦は先発が初回から飛ばすから、どうしても継投勝負となる試合が増える。その時に、左右のバランスが良ければ、次々に投入できる。左投手が1枚しかいないとなれば、投入場所を考えなければいけない。その点も解消したし、今永を後ろに回すことで、勝ちゲームの投手を早めに投入できた。攻めの采配をしやすくなったよね。左の救援投手が少なかった広島との差につながった気がする。
ただ、この決断も、日本人監督では難しい部分があるよ。シーズンを柱として頑張ってきた功労者を、先発から後ろに回すのは……。13年の日本シリーズで楽天の星野仙一監督(当時)が、則本を第1戦に先発させた後、後ろに回したけど、それは圧倒的に救援陣が弱く、クローザー不在という状況があったから。普通なら、先発で……と考えるよね。
しかも3試合制のCSファーストステージでは、第1戦で今季6勝の井納を先発させた。悪天候が予想されていたし、1敗でもしたら苦しくなる状況はわかっていたはず。一般的な考え方ならエースを立てるよ。奇策と言われるものは、選手との距離感がしっかりしていなければ、首脳陣の意図も伝わらず、選手も応えられない。そんな部分は見えないから、ラミレス監督がうまくチームをまとめているのだろうね。シーズン中に首位から14.5ゲーム差をつけられたチームが日本シリーズに出場することへの意見もさまざまあるだろうが、これ以上優勝チームにアドバンテージをつけたら、CSがまったくつまらないものになってしまう。今回はDeNAを素直にほめるべきだろう。