柏崎市議会では4月、産業大の厳しい姿が報告された。入学者のうち、スポーツ特待生と、中国・モンゴルなどの留学生がそれぞれ4割弱で、一般学生は3割弱という。留学生頼みの現状を問われた学長は「大学は学生がいてなんぼ。学生がいなかったら学納金が入らず、経営できないので、留学生を募集せざるをえない」と胸の内を吐露した。
地元市議は「市長も議員も大学が大事という考えだが、市財政を考えると『果たしてできるのか』という思い」と話す。議会内でも「税金を無駄にすべきでない」「同様に定員割れの工科大はどうするのか」など様々な意見があるという。
こうした悩みは、柏崎市だけの問題ではない。
編集部は大学情報の公開サイト「大学ポートレート」をもとに、私大の定員充足率を独自にまとめた。サイトでは私大の約97%にあたる約600校のデータがわかる。公表された直近3年の収容定員と在籍者から充足率を計算すると、3年連続で70%以下が53校あった。地方の私大が目立つ一方で、私大が集中する東京都内は2校のみだ。
新潟工科大をはじめ、苦境の私大は自治体と民間が連携した公私協力方式が多い。13年に閉校した愛知新城大谷大(愛知県新城市)や三重中京大(三重県松阪市)はともにこの方式だ。
「公私協力方式は、地方活性化を拡大戦略のチャンスとみた私学法人と、大学を誘致したい自治体の思惑が一致し、1990年代に増えました。しかし、長期的展望を欠き、多くは現在定員割れ。加計学園が愛媛県今治市に新設する獣医学部もこの方式です。他大学の獣医学部と比べて定員規模が大きく、負の遺産となる恐れがあります」(木村氏)
18歳人口は90年代初めに200万人超で、現在は約120万人。近年は横ばいだが、18年度以降大きく減る。30年代初めに100万人を切る見通しだ。
一方で、大学の数は増え続け、国公私立合わせて780校。18歳人口のピーク時から倍増した。増えすぎた大学をいかに適正規模に戻すか。全国で再編が始まろうとしている。(本誌・吉崎洋夫)
※週刊朝日 2017年10月27日号