「国盗り」の野望は潰(つい)えたのか。小池百合子東京都知事は民進党の前原誠司代表から衆院選への出馬を要請されたが、「総選挙への出馬はありません」と明言。民進党をのみ込むという奇襲で一時は政権交代も射程に収めたはずが、急速に失速し始めた。その舞台裏を暴く──。
「希望の党の関係者から出馬を持ちかけられました。『自己資金1千万円があれば出馬できる。そのうち300万円は今週中に振り込んでほしい』と言われて、振り込め詐欺みたいだなと。当時は候補者が足りず『誰でもいい』という感じだったようですが、その後、民進党との合流が決まって話は立ち消えになった。受けていたら、今ごろ大変だったでしょうね……」
こう語るのは東京都の会社社長の男性。この男性の不安どおり、希望の党が迷走を続けている。朝日新聞社が10月3、4日に実施した世論調査では比例区の投票先としては12%。民進党との合流決定前だった前回の調査より1ポイント減少した。自民党議員がこう語る。
「かつて総裁選で小池さんを担いだメンバーが様子を探るために電話すると、『自民党を辞めて、あなたもこっちへいらっしゃいよ』などと興奮している時もあった。小池さんは自民へ事実上の総裁選を仕掛けてきたんですよ。『私と安倍さんのどっちを選ぶ』って。ただ維新とも組み、民進を軽んじたことで失敗したね」
風向きが変わり始めたのは、9月29日に小池氏が会見で、民進党からの合流組の一部を「排除します」と宣言したあたりからだった。「排除」された枝野幸男氏らが中心となり、リベラル勢力の立憲民主党を結党。安倍自民党と「1対1」の対決の構図をつくるという前原氏らの思惑が早くも崩壊した。希望の党の公認を辞退し、枝野新党へ走る民進前職が後を絶たない。小池氏側近がこう語る。
「小池さんの排除宣言は前原さんも誤算だったはず。希望の綱領に『保守』と記された時点で、岡田克也さんは『持たないな……』と言っていたもの。都市部で市民活動をしているリベラル層が、旧民主が政権を取った時のコアだからね。案の定、立憲民主党が民進のコア層を占拠している。誤算は小池さんがゴリゴリの保守2大政党論者だったこと。前原さんは保守とリベラルの共存を志向したが、ボスの小池さんが天然で突っ走った。立憲民主党ができた時、小池さんは『わかりやすくなった』と軽口をたたいていたが、枝野陣営への雪崩現象が起こり、前原さんは動揺した。さすがに小池さんも慌てて前原さんと連合に支援を頼みに行ったが、空中戦は長くは続かない」