同書によると、ドイツにあったのぞき劇場「ワンマルクシアター」をヒントに、ストリップ劇場の興行主ら二十数人のグループが1人1口50万円を出資したのが始まり。有名なスポーツ選手も1口乗ったそうだ。川沿いの空き倉庫を活用し、約1カ月半かけて劇場を建てた。

「4.5」というのは「四畳半」の意味である。神代辰巳監督の名作ロマンポルノ「四畳半襖の裏張り」(73年)や、野坂昭如が雑誌に掲載した「四畳半襖の下張」(72年)を連想させる。だが女性はいきなり裸にはならない。劇場内ではこんなストーリーに基づいて演技をしていた。

<会社か学校から帰ってきたA子。自分の部屋でくつろいでいる。本(女性向けのエロ本か)を読んでいるうちに興奮してしまい、次第に服を脱ぎ、最後はパンティー1枚に。そして、おもむろに中に手を入れる>

 その「行為」が終わると、ショーは終わりである。意外にあっけない。20分で2千円。高いのか。安いのか。何とも言いがたいが、客が入場する個室の中にはティッシュペーパーの箱とゴミ箱が置いてあるだけだった。客の満足度(スッキリ度?)としては、手頃な料金だったと言えなくもない。

 20分のショーのあとは20分の休憩タイムである。ストリップ劇場の場合はたいてい、何度も出入りができるが、のぞき劇場は完全入れ替え制。それでも、劇場の前は押すな押すなの長蛇の列だったそうだ。売り上げは1日50万~60万円! 1日に延べ250~300人の客が来た計算になる。

 当然、警察も目を光らせていただろう。「興行場法」における劇場の規定(営業の形態など)をクリアしていなかったのだ。そこで「シアター4.5」は考える。入場した客の一人ひとりにスケッチブックと鉛筆を持たせた。「ここは劇場ではなく、女性の裸をデッサンする立派なアトリエである!」という主張である。

 涙ぐましい努力と言えなくもない。だが、あの手この手でお上の取り締まりをくぐり抜けようと知恵を絞るのは、性風俗の業界では当たり前のこと。昭和20年代のストリップショーでも、裸の踊り子がブランコに乗る「ブランコショー」が話題を呼んだではないか。腰を覆う布がヒラヒラとめくれる。見えそうで見えない「ギリギリのライン」を楽しむのだが、「ブランコが勝手に揺れているだけ」と劇場側は説明していた。

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