「最初の練習試合で盗塁を刺し、試合に出してもらえるようになりました。バッティングはゴルフスイングみたいな打ち方で、そこからフォームを直すのに時間がかかりました」
本塁打が増えたのも、最上級生になってから。高校通算44本のうち半数以上が昨秋以降で、ラスト8試合で8本を放った。
夏の広島大会までは欠点のアッパースイングで、強引に引っ張る打席が目についた。甲子園で自身初となる右方向への本塁打も放ったが、短期間で悪いクセを直せるものなのだろうか。
「流しのブルペン捕手」ことスポーツライターの安倍昌彦さん(62)は言う。
「県大会ではバットが下から出ていると思いましたが、甲子園ではレベル(水平)スイングになっていました。聖光学院(福島)戦で高めのボールをライナーでホームランにしたのも、相当な技術です。バットをかぶせるような軌道で出さなければ、フライになる高さでした。何かのヒントをつかんだのかもしれませんね」
大化けも高校生の特権。早くも広島、阪神、巨人、楽天などの高評価が報じられている。高卒入団直後から活躍した捕手は、城島健司や谷繁元信など限られているが、安倍さんは、
「城島さんや谷繁さんよりも上のドラフト1位候補だと思います。城島さんは打撃、谷繁さんは肩の“一芸”に突出していましたが、中村君にはプロレベルが三つある。肩、足、そして頭脳です。木製バットへの対応など、バッティングはわからないところもあります」
U18のワールドカップでは、意外にも打撃の真価が試されるかもしれない。
※週刊朝日 2017年9月8日号