「これまではどうしても上半身で打とうとしている自分がいて、選抜では打率を残せなかった。大阪大会では、下半身で打つことを意識して打席に入ったら、調子が上向いてきた。自分の調子の上げ方をつかんだという意味で、この夏の経験は大きいです」
さらに藤原には足がある。50メートル走は5秒7。大阪大会準決勝の履正社戦ではライト前ヒットを二塁打にし、四死球で出塁すれば果敢に盗塁を仕掛ける。単打が長打となるのだから、相手にとっては脅威だろう。
「盗塁はすべて自分の判断で試みています。監督からのサインは『走るな』という時だけです」
西谷監督は藤原を不動の1番に据えてきた。
「まだまだ2年生で、完成された選手でも何でもない。ただ、非常に勢いのある子。のびのびと甲子園で暴れてほしい。藤原らしささえ前面に出してくれれば、あとは3年生がフォローしてくれると思います」
どうしても藤原や、中学時代に146キロを記録し、スーパー中学生と騒がれて入学した根尾に注目が集まるが、もうひとり、西谷監督の信頼が厚い選手が3番を打つ2年生の中川卓也ではないだろうか。選手の競争が激しく、頻繁にスターティングメンバーが入れ替わる同校にあって、彼がスタメンから外れることはない。
「私は選手全員を信頼しております(笑)。中川に関しては、ミート力ということでいったら、2年生の中では一番ですね。今は一塁を守っていますが、サードとセカンド、外野もできます」
戦力に穴がなく、控え選手にも能力の高い選手がそろう大阪桐蔭の対抗馬となるのは、3季連続ベスト4の秀岳館に、神奈川大会で4試合連続を含む5本塁打を放った増田珠を擁す横浜。さらにバッテリーが共に、U18ワールドカップに臨む高校日本代表の第1次候補に選ばれている広陵、そして全国最多となる8度目の夏優勝を狙う中京大中京となるだろう。
しかし、組み合わせ抽選の結果、この4校は同じ「死のブロック」となった。
このブロックを勝ち抜いた学校が、実質、大阪桐蔭への挑戦権を得ることになるのではないだろうか。(ノンフィクションライター・柳川悠二)
※週刊朝日 オンライン限定記事