塚本幼稚園を運営する森友学園の経営はこの4月、籠池氏から長女・町浪氏の手に引き継がれた。しかし保育園を運営する社会福祉法人「肇國舎(ちょうこくしゃ)」の経営は未だ籠池氏が行っている。大阪市はおそらくそこに目をつけたのだろう。この4月以降、保育園の経営に対する大阪市側の指導がにわかに厳しさを増すようになったのだ。
理由は保育士不足。森友保育園には6月1日現在、0~5歳の36人の園児が在籍している。大阪市の基準では常勤保育士6人が必要とされる人数だ。しかし、実際には非常勤保育士4人しか在籍しておらず、森友保育園は大阪市の基準を満たせないでいる。
確かに、認可保育園での保育士不足は、不測の事故が起こりかねない大きな問題ではある。大阪市が厳しく森友保育園を指導するのは当然とも言える。だが、その指導の方法がいささか異様なのだ。
「市が実地調査に入る前には、必ず我々に連絡が入るんですよ」と、在阪テレビ局関係者が語ってくれた。「どこに車を止めて、どの経路で保育園に入るのか、調査の時間がどれほどで、押さえるべきポイントはどこか、ほんまに細かいところまで、事前に伝えてくるんです。よっぽどテレビに映りたいんでしょうね」
事実、この証言の通り、大阪市の実施するヒアリングや実地調査には在阪メディア各社がぞろぞろついて歩き、不思議なことに、普段なら記者たちが締め出されるはずの調査現場の様子までもが、しっかりとカメラに収められている。「なんとかして、籠池夫妻を見世物にしようという大阪市側の強い意思を感じますねぇ。僕らもそれにのせられたらあかんのやけど、何せ、あの夫婦を流したら、数字が取れるからなぁ」(同前)
こうして在阪メディア各社は、大阪市・大阪府の術中にまんまとハマり、「数字が取れるから」という理由だけで籠池夫妻を「珍獣」扱いする報道にかまけるばかりだ。森友問題の現場が大阪である以上、在阪メディア各社こそが疑惑の究明に力を入れるべきところだが、その気配は一切見えない。私の手元にある資料にアプローチをかけてくるのは東京のメディアばかり。大阪のメディアから声をかけられたためしは一度もない。