以来、何度となく番組でお世話になった。局には愛車ルノー5ターボでやってきた。クルマと洋服に金をかける東京っ子。シャイネスと気遣いと、そこかしこのユーモア。著書『心に訊く音楽、心に効く音楽 私的名曲ガイドブック』は選曲の参考書になった。
2015年のアルファミュージックライブでは洗練のドラムさばきに改めてため息をつき、翌年クロード・ルルーシュのコンサートでフランシス・レイの名曲に客席の前後で耳を澄ませ(帽子を被った幸宏さんはパリッとしたスーツだった)、20年公開の映画『音響ハウス』試写と完成披露パーティーに大貫妙子さんと3人で向かったのが最後になった。
その大貫さんが追悼文をアップしている。彼のドラムがなくては考えられなかったレコーディング時のエピソード。幸宏さんの体調回復を祈り、彼女は1年半ほど待っていた。
「レコーディングは何の問題もなく終了し。(略)私たちの気遣いもよそに饒舌で、スタジオのソファーに座って『ねぇねぇこの写真みてよ』と何時間も昔の話や、ワインの話や…。ほんとに楽しそうでした。(略)ありがとう、ユキヒロさん またいつかどこかで!」
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞。新刊「松本隆 言葉の教室」(マガジンハウス)が好評発売中
※週刊朝日 2023年2月24日号