プリンやアイスなどにもアブラが使われている理由について、林さんは「加えることで味がよくなるためでは」と指摘する。

「意外ですが、弁当やおにぎりの米飯にも、ツヤ感を出したり粒がくっつかなかったりするように“炊飯油”というアブラを混ぜるケースがあります。それほどたくさんの量はとらないので見逃しがちですが、チューブに入った練りカラシや練りわさびにも、アブラが入っています」(同)

 食の欧米化とともにアブラの摂取量は増えているように思えるが、実は、日本植物油協会によると、日本人の脂質摂取量は1995年をピークに減少し、2005年ごろから横ばいになっている。これは太ることを気にして、サラダ油やマーガリン、マヨネーズなどを控える人たちが増えた結果だという。

 だが、われわれがとっているアブラのほとんどは、食材や加工食品などに含まれる隠れアブラによるもの。同協会の資料によると、11年の厚生労働省「国民健康・栄養調査」での日本人の1日あたりの脂質摂取量は54グラム。うち「見えないアブラ(加工食品と食材そのものに含まれるアブラ)」は42.7グラムだ。摂取脂質の8割近くが隠れアブラという計算だ。そうなると、いくら料理に使う量を減らしても焼け石に水でしかない。

 ところが、専門家は「根本的な問題は、量よりもむしろ質」というのだ。

「現代人の脂質摂取量は少し多めですが、無理をして控える必要はありません。実は、隠れアブラで気にしなければいけないのは、使われているアブラの質や種類のほうなんです」

 こう忠告するのは、『カラダが変わる!油のルール』(朝日新聞出版)の著者で、油脂と健康の関係に詳しい麻布大学生命・環境科学部食品生命科学科教授の守口徹さんだ。

 厚労省「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、現代人の脂質摂取の目標量は「総エネルギー量の20~30%」となっている。年齢や性別などで異なるが、男性では55グラム前後、女性では40グラム前後。先の日本植物油協会のデータと比べても、女性では幾分多いものの、男性ではあまり変わらない。

週刊朝日 2017年5月26日号より抜粋