ロ:実は私もあなたと少し似た体験をしているんです。両親はニューヨークで結婚しましたが、私が生まれたあと父は家を出たんです。私は母子家庭で育ち、13歳のときに母が再婚し、妹ができました。母は私に、私の父の話をしませんでした。別にタブーだったわけじゃないのですが、私も子どもながらに理解するところがあって、聞かなかった。
サ:わかります。
ロ:でも大人になってから「自分の父親を知りたい」という気持ちが出てきたんです。父の名前は知っていたので、40歳のころ母に「父を探してみようかな」と聞きました。母は「いいわよ。でも私には知らせないでね」と。私は母が亡くなるまでは、罪悪感から父を探せませんでした。
サ:はい。
ロ:母が10年ほど前に他界したあと、父がまだ存命でニューヨークに住んでいるのではないかと想像したのです。そして私は父を探し始めました。あなたのようにデジタルのツールを使って。ネットの質問サイトに「父を探しているんだけど、どうしたらいいかな?」と書いたら「ニューヨーク市の過去の電話帳を見られるサービスがあるよ」と教えてくれた人がいた。私はニューヨーク市の地図を壁に貼って、2~3マイルの半径の円を描いて、電話帳から父の名前を探したんです。
サ:わお!
ロ:同じ名前の人が18人見つかった。私は彼らに手紙を書きました。
サ:なんて?
ロ:「僕は元気でやっています。別にあなたに頼ろうとしているわけではありませんが、もし僕に連絡を取りたければ」とメールアドレスを添えました。そうしたら2カ月後、メールが来たんです。「君はロバートか? 信じられない! 僕はあなたの父です」と。
サ:すごい!
ロ:私が母の旧姓などを聞いたらすぐに返事がきて「本当の父だ」と確信しました。その1年後、父に再会したんです。
サ:驚きました。僕の体験とある意味、とても似ているストーリーですよね。
ロ:そうなんです。だからあなたの物語を知って非常に心が動かされたんです。
サ:あなたも本を書いたほうがいいですよ!
ロ:やっぱり?(笑)。でも私は父を探し始めるのがずいぶん遅くなってしまった。あなたは故郷や母親を探すことに葛藤はありませんでしたか?
サ:僕にはなかったんです。最初はグーグル・アースを見てなんとなく、興味程度で始めたのですが、だんだん探す行為自体に取り憑かれてしまいました。
ロ:広大なインドから探すのは大変だったでしょう。