昨年の4.4~11倍(ウェザーニュース)と発表された今年の花粉の飛散量。新たな薬が登場する中、舌下免疫療法も診療ガイドラインに記載され、花粉症の治療の選択肢が広がっている。
東京都に住む平田恭二さん(仮名・65歳)は58歳の3月、突然、花粉症の症状が出た。鼻水が止まらず、営業の仕事に支障が出たため、会社の近くのふたばクリニックを受診。抗ヒスタミン薬と、鼻づまりを改善するロイコトリエン拮抗薬を処方してもらった。それから毎年、2月には受診して早めに薬を飲み始めるようにしていたが、14年10月に舌下免疫療法が保険適用になったことを知って、ぜひ受けてみたいと同クリニック院長の橋口一弘医師に申し出た。
舌下免疫療法とは、アレルゲンであるスギ花粉のエキスを舌下(舌の裏)にたらして、からだに少しずつ注入することで、スギ花粉にからだを慣らしていく治療法だ。花粉症の唯一の根本的な治療法で、医師の治療方針の基となる「鼻アレルギー診療ガイドライン(16年版)」では、治療選択肢として記載された。
1日1回投与で、治療開始後1週間は薄めのエキスを、2週目は1週目の10倍の濃度のものを、それぞれ1週間かけて0.2~1ミリリットルと徐々に増やしていく(増量期)。3週目以降は2週目に使った濃度のものを1ミリリットル投与する(維持期)。投与後2分間保持して飲み込む。5分間は飲食やうがいを控える。投与直後は口の中やのどが腫れるなどの副作用が出やすいため、30分くらいはシャワーや入浴、激しい運動を避ける。徐々にからだを慣らす治療法のため即効性はなく、毎日投与し続ける必要がある。
「通常は花粉の季節を避けた6~12月に開始します。次のシーズンでは顕著な効果が望めないこともありますが、2シーズン目には7~8割の人に症状の軽減が期待できます」
と橋口医師は話す。
平田さんは14年10月に舌下免疫療法を開始した。15年の春にはあまり効果がなかったためアレグラを併用したが、16年の春には症状が大きく改善されて、花粉シーズン中に点鼻薬を1本使っただけで内服薬は必要なかった。現在でも投与を続け、今年も症状は出ていないという。