昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」は平均視聴率16.6%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)、三谷幸喜のユーモアをベースにした人物造形、最新CG技術を駆使した戦闘シーン、真田信繁(幸村)が豊臣秀吉の馬廻衆だったことや「秀次事件」の最新歴史研究の成果をドラマの中に反映させたことなどが高い評価につながったと言っていいだろう。
キャスティングも、真田信繁(幸村)役に堺雅人、その父・真田昌幸に草刈正雄、徳川家康に内野聖陽、豊臣秀吉に小日向文世など、個性派を適材適所に配して、好演を導き出したことも高視聴率の要因だろう。
言うまでもなく、天下人家康に徹底抗戦した幸村は日本史の正統派ヒーローだが、世代によって「幸村像」は異なるようだ。
高齢者にとっては立川文庫の「真田十勇士」、団塊世代にとっては長編アニメーション映画「少年猿飛佐助」に登場する美剣士、池波正太郎『真田太平記』愛読者というように、幸村ファンの層は広くて厚い。
幸村の原型は、江戸時代中期の小説『真田三代記』に見られるが、「真田十勇士」という表現をはじめて用いたのは、大正時代に刊行された立川文庫だ。以後の「ヒーローとしてのイメージ」は、それによって定着した。
その真田幸村の愛剣は、宇多国次の作で無銘。金象嵌で「泛塵(はんじん) 真田左衛門帯之」と刻まれている。
「泛塵」は浮塵(ふじん)の意味で、「人の命は空中に浮かぶ塵のようにはかないもの」という無常観を表している。幸村は刀もさることながら槍の使い手としても知られており、愛槍は穂先が十文字の形をした「十文字槍」。
その槍の柄は朱色に塗られ、真田の「赤備え」に恥じぬ名槍だった、と講談や軍記物語は伝えている。幸村の人柄は、後に松代藩初代藩主となる兄・信之が「幸村君伝記」に語ったところによると、「柔和で辛抱強く、物静かで怒る様なことは無かった」そうだ。
和歌山県九度山町の「真田宝物資料館」には幸村の十文字槍の穂先が、長野市松代町の「真田宝物館」には真田家にとって重要な刀と薙刀が保管されている。中でも重宝とされているのが、「吉光」である。鞘は黒蝋色塗で、柄には赤銅午が彫刻されている美しい刀だ。これは徳川家康から松代藩2代藩主・信政が拝領したものだ。