真田家14代当主の真田幸俊さんがこう語る。
「真田家ではこの吉光を寝ずの番で管理してきました。吉光は戦うためのものではなく、松代藩という体制と真田家を守るものだったのです」
一方、戦いの傷痕が残る、昌幸の兄である信綱所用と伝わる青江の大太刀や、信之の所用とされる、長巻を磨上(すりあ)げて打ち直した無銘の刀もある。これらはいずれも戦を経たものだ。
「戦のための刀と政治のための刀、この二つを見ると、時代の変化に柔軟に対応した真田家らしいなと思いますね。二つの時代を経験した刀にかかる重みは相当なものです」(真田さん)
乱世の中、親子、兄弟で敵と味方に分かれ、それでも体制に従って家を継いできた真田家。これらの刀剣の輝きの中に真田家の歴史が映し出されるようである。(ライター・植草信和、本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2017年3月10日号