留学生と同じ屋根の下で寝食をともにすれば、日本にいながら“寮内留学”を体験できる。早稲田大の国際学生寮「WISH」で暮らす女子学生(20)は、「海外留学前の準備段階として、最適です」と語る。

 国際競争力のある「スーパーグローバル大学」づくりを文部科学省が進めていることもあり、早大のほか、明治学院大などですでに導入された。慶応大や青山学院大などでも、同種の寮が今春に開設される予定だ。

 世界で活躍するリーダー育成をめざした少数精鋭の寮もある。京都大が13年に設けた5年制大学院「総合生存学館」で、全寮制となっている。

 学業に専念できるよう、月20万円の奨励金が特待生に給付される。寮は、異なる考えを持つ者同士の研鑽をねらう「研修施設」との位置づけだ。京大は「国際機関で働く学生や就職が決まった学生もおり、成果が出ている」という。

 旺文社教育情報センターによると、寮を持つ大学は00年に328校あった。08年に357校、16年には382校と、近年は増える傾向にあるという。

 大学がつくる寮が充実する一方で、地方出身の苦学生を支えてきた県人寮は縮小傾向にある。全国学生寮協議会によると、東京近郊の県人寮はかつて60ほどあったが、今や40ほどしかない。定員に届かない県人寮も出ているという。

 学生寮に対する意識や環境の変化から、県人寮にも新たな動きが出ている。

 本県人寮「有斐学舎」は今年、開寮136年にして初めて、女子学生募集に踏み切った。男子80人の定員に加え、2人用の女子部屋3室を設けて6人を新たに受け入れる。入寮を求める女子学生のニーズにこたえるとともに、「男子学生が紳士になることも期待している」という。

 山形県人寮「駒込学生会館」は、新たに女子寮を建てた。寮監は「学生寮は男っぽいイメージがあるが、今の時代には合わない。うちは定員の半分を女子にしている」と言い、入寮生の確保につながっているようだ。

 男子寮を維持しつつ、学生を確保している県人寮もある。

 鹿児島県人寮「同学舎」は県内でのPR強化だけでなく、奨学金の貸与や、TOEICなどの受験料補助もしている。「女子学生の受け入れを求める声は毎年あるが、設備を整えるだけの余裕がない。その代わりに、特色ある取り組みに力を入れている」(事務長)という。

週刊朝日 2017年2月17日号

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