こうした各社の工夫の背景には、受験菓子の市場に対するメーカーの危機感もある。

 ネスレ日本のマーケティング部長の槇亮次さんは「受験生の数は今後増えないので、マーケットは縮小せざるを得ない状況。当初はだじゃれの商品が多く出ていたが、今はかなり淘汰された」と話す。

 別の菓子メーカーの担当者は「クリスマス、お正月、バレンタインと大きな商戦の狭間の時期だけに、小売店も受験菓子の大きな売り場をつくれない」という。

 調査会社の富士経済によると、受験生応援の菓子の市場規模は、13年に30億円弱だった。焼き菓子や半生菓子なども含めたバレンタインの市場規模(600億円)の大きさと比べると、菓子メーカーにとっては限定的だ。

 近年は菓子以外にも、受験生の健康などを意識した商品展開をする企業が増えている。

 ファンケルヘルスサイエンス(横浜市)は今月20日から、受験生らを応援するサプリメント「能力応援パック」(3496円=以下、税別)を数量限定で売り出す。「目や脳が疲れると、思考力、集中力、記憶力が落ちてしまう。見ることと考えることをサポートする商品なので、受験の追い込みに使ってほしい」と同社広報。

 森永製菓(東京都)はゼリー状の栄養補給食品「ウイダーinゼリー」(200円)を、「志望校にin」と銘打って受験生応援用にPRする。エネルギーやビタミンを効率的に補えるのが売りで、「試験本番直前に緊張しているときでも、飲みやすい」という。

 フジッコ(神戸市)は今年から、「カスピ海ヨーグルト」(258円)で受験生応援用のパッケージを始めた。カスピ海乳酸菌から生まれる独特の粘りを、“粘り勝ち”に引っかけている。乳酸菌の機能もアピールし、「毎日食べて乳酸菌で腸を健康に保てば、風邪やインフルエンザの予防にもなる。合格に近づける」と売り込む。

 江崎グリコ(大阪市)は、牛丼や中華丼などのレトルトどんぶりの素「DONBURI亭」(250円)で、受験生応援のキャンペーンを展開中だ。

 商品包装のQRコードをスマホで読み取ると、グリコのゴールインマークの入った絵馬に、オリジナルの応援メッセージを書き込めるようになる。絵馬の画像は保存でき、贈りたい相手の受験生とも共有できる。同社は「ゴールインマークは、合格をイメージさせてくれる。受験生を励ますためにぜひ使ってほしい」。

 メーカー各社も受験生に負けず劣らず、知恵を絞っている。受験生のみなさん、ゴールまであと少し。頭を柔らかく、縁起も担いで、カシこい答案作成を。

週刊朝日  2017年1月27日号