下流老人とは、病気や事故、熟年離婚などのやむを得ぬ事情で、貧困に陥った高齢者。生活保護基準相当の収入で暮らす人や、その恐れがある人をさす。

「収入が少ない、貯蓄がない、頼れる人がいない、の“3ない”の状態にあるのが下流老人です。自力ではなかなか、貧困状態から抜け出せない。まずは生活や貯蓄を見直し、助けを求められる人や場所を探してほしい」(藤田さん)

 今月13日には、『続・下流老人』を出版する。前著の副題は「一億総老後崩壊の衝撃」だったが、今回は「一億総疲弊社会の到来」。高齢になっても、過重な労働に追い込まれる人たちの姿を伝えている。

 たとえば、元大手物流会社員の66歳男性。

 50代でリストラにあって退職を迫られた。以来、妻と子3人の5人の生活は一変した。当時は学費や仕送りに月10万円、住宅ローン返済に月13万円など出費がかさむ時期。新たな正社員の仕事を探したが、50代の年齢がネックとなり、見つからなかった。

「男性は、運送会社のバイトをしたものの体がついていかず、2カ月で辞めました。病院清掃員、デイサービスの送迎運転手など職を転々と変え、今はコンビニのバイトに行きつき、時給900円で週5~6日働いています」(藤田さん)

 現在もらっている年金は、妻と2人分で月18万円。大半は住宅ローン返済に消える。2千万円以上あった貯蓄も徐々に減り、今や数百万円。バイトをやめると、生活は立ちゆかなくなる。

 新著ではほかにも、お金のために必死に働く高齢者の姿を伝えている。

 病気の親や配偶者の介護、離婚などの問題を抱えて実家に戻ってくる子や孫の世話……。浮かび上がるのは、現在の社会問題と結びついた高齢者の貧困だ。

 妻の脳梗塞を機に、半世紀ほど営んだ豆腐店をたたんだ70代男性。妻の医療費負担などが重く、廃業から5年ほどで蓄えが尽きた。国民年金だけでは暮らせず、75歳で新聞配達を始めた。

 悠々自適の生活を送るはずだった元公務員の70代男性。夫の暴力で離婚した娘が、2人の孫を連れて実家へ戻ってきた。肉体的にも精神的にも疲れ果てた娘は、うつ病となって働けない。男性は孫の教育費のため、マンション管理の仕事を72歳から始めた。

暮らしとモノ班 for promotion
なかなか始められない”英語”学習。まずは形から入るのもアリ!?
次のページ