井上康生監督 (c)朝日新聞社
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 男子柔道は負けて強くなる。6月の延岡合宿(宮崎県)で追い込みをかけ、今月はスペインで他国のライバル選手もいる国際合宿(欧州柔道連盟主催)に参加。8月5日開幕のリオデジャネイロ五輪に向け、準備も最終段階に入った。井上康生代表監督は選手全員にこう呼びかける。「五輪に魔物などいない」。世界が恐れる常勝軍団、ニッポン柔道は復権なるか。選手たちの声を拾った。

 先陣を切るのは金メダルが有力視される60キロ級の高藤直寿。それに続くのは、今回出場する男子選手で唯一のロンドン五輪経験者の66キロ級海老沼匡だ。

 前回五輪では直前にイベントや合宿が重なり、海老沼自身は「疲れがあり、精神面もベストとはいえない状態だった」と振り返る。結局は準決勝でグルジア選手に一本負けを喫し、結果は銅。今回はリベンジの舞台だ。代表選考を兼ねた2月のグランドスラム・パリで優勝。4月の選抜体重別選手権は3位だったが、本番が近づくにつれ調子を上げている。海老沼は言う。

「ロンドン五輪は男子日本柔道が金メダルゼロに終わった。あれは僕の責任でもある。やっと雪辱の時が来た。ロンドンの“借り”を返すため、これまでやってきた。この4年間が間違っていなかったことを証明したい」

 73キロ級だがひと回り大きく見えるのは大野将平。ヘラクレスのような筋骨隆々のボディーだ。合宿時、上から吊ったロープを腕力だけで昇降するトレーニングでは、降り切る直前に止まり、再び昇る負荷の高い練習を軽やかにこなす。同じくムキムキのコーチは「大野の筋力は外国人と同等というか、超えてますから」。

 風に逆らわない「柳」にも例えられる柔道が持ち味なのは、81キロ級の永瀬貴規。井上監督もその独特なスタイルに「どこで指導を受けたの?」と思わず本人に尋ねたらしい。階級は重いがパワフルな柔道ではない。長い手足で組み手を制し、相手の技で足を跳ね上げられても、さらに足を上げていなせる。「相手の力がすべて吸収されてしまうような、それでいて、いきなり力強い技を繰り出す柔道」(井上監督)。当の本人は自身をこう分析する。

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