名古屋場所への意気込みを語る稀勢の里 (c)朝日新聞社
名古屋場所への意気込みを語る稀勢の里 (c)朝日新聞社

「序盤で格下を相手に取りこぼし、一気に盛り下がるという展開は、今回はないはずですよ。それだけ地力がついています」

 大相撲名古屋場所で綱とりに挑む大関・稀勢の里(30)について、スポーツ紙デスクはこう語る。

 力士の人気のバロメーターである懸賞数は8日現在で207本と、初めてトップに。久々の日本生まれの横綱誕生へ、ファンの期待は高まるばかりだ。

「稀勢の里は『腰が落ち着いた』と言われます。足が長いから腰高が弱点でしたが、先々場所あたりから改善され、下半身の安定感が出てきて立ち合いがよくなった。じっくり落ち着いて相撲を取れるようになったんですよ。一昨年の初場所で故障した右足の親指の完治も背景にあるようで、2場所続けての13勝、綱とり挑戦となりました」(前出のスポーツ紙デスク)

 一方で、稀勢の里と言えば、これまで何度もファンの期待を裏切ってきた。今回もいま一つ盛り上がりに欠ける印象は否めない。

「たとえば、琴奨菊なんて、綱とりをかけた春場所の前は新婚絡みの話題でもメディアに出まくり、注目度が高まりました。稀勢の里は、『相撲だけに集中しろ』との先代師匠(元横綱の故・隆の里)の教えを守り、相撲以外の取材を受けず、露出が少ない。実直すぎるというか、華がないというか。綱とりに成功したら、先代師匠に倣い“おしん横綱2世”と呼ばれるんでしょうけど、今の若い人に“おしん”って言ってもわからないだろうなぁ……」(相撲記者)

 いやいや、海外でも人気のおしんを知らない日本人のほうが問題なのだ。日本人気質を良しとする相撲ファンに聞けば、自画自賛の目立つ白鵬よりも、実直な姿勢の稀勢の里が好きという人も多いはず。

 綱とりのカギは、その白鵬との直接対決が握る。

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