NHK連続テレビ小説の「とと姉ちゃん」では「森田屋」の大女将・まつを演じていた秋野暢子さん。きっぷがよく、情に厚い役柄はカッコいい秋野さんにピッタリ。作家・林真理子さんとの対談で、その裏話を教えてくれました。
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林:朝ドラ(「とと姉ちゃん」)では「森田屋」のおばあちゃんのまつさん、大人気でしたね。背が高くてスタイルのいい秋野さんが、背中を丸めておばあさんっぽくなさっていたから、最初は誰だかわからなかったぐらいですよ。
秋野:そんなふうに思っていただいてうれしいです。最初にスタッフの方と打ち合わせしたときに、「誰なのかわからないところから入りたいですね」と言って、メイクやしぐさをつくっていったんですよ。
林:俳優さんってすごいと思いましたよ。チャキチャキしてるんだけど、年をとっている感じがすごく出ていて。
秋野:昨日ワンちゃんの散歩をしていたら、ご近所の自転車屋さんが「秋野さんを見てると、うちのばあちゃん思い出すんだ」っておっしゃるんです。その方、70歳くらいなんですけど。
林:あら(笑)。
秋野:ちょっとうれしかったですね。「祖母を思い出す」「母を思い出す」というコメント、たくさんいただきました。
林:女優さんって、たとえ役であっても老けて見られるのを嫌うって言うじゃないですか。でも、バラエティー番組で若くてきれいな秋野さんの姿を見てるから、「よくここまで化けたなあ」とは思っても、「老けた」とは全く思いませんでしたよ。
秋野:2、3日前に奥多摩のほうにロケに行ったんですが、観光客の方が「あら、まつさん、あなたお若いのね」って(笑)。たくさんの方に見ていただいたという実感がありますね。現場の雰囲気もすごくいいんですよ。
林:ごはんを食べるシーンが多いですよね。新聞の投書欄に、森田屋さんの食事シーン、ちゃんとごあいさつして箸をとるのがすごくいいってありましたよ。
秋野:家長が「いただきます」と言って箸をとって食べ始めるんですけど、あの時代の「いただきます」は、手を合わせないんですね。手を合わせるのは、戦後かららしいです。