
落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は、「失言」。
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人間、齢(よわい)を重ねると子供に戻るという。張り詰めていたものが緩んでくる。ゆるゆるのご年輩は羨ましい。かくありたい、見守りたい。
先日、ゴールデンウィークに我が家の次男(8)が「わんぱく相撲大会」に出場するというので、その応援に行ってきた。
大勢の観客のなかに、ひときわ喧しいお爺さんがいた。子供たちがシコを踏むと、
「ヨイショー! ヨイショー!」
と掛け声を飛ばす。誰が勝っても喜び、誰が負けても悔しがる。気のいいお爺さん。うちの次男が勝った時も、お爺さんは「やったーっ!!」とバンザイして私以上に喜んでいた。
取組が進み、結びの一番。土俵上には西方にヒョロリと痩せた男の子。東方はかなり体格のいい男の子。お爺さんが二人の仕切りを見ながら、
「アチャー! 相手、デブだなぁ。こりゃ大変だよ! しっかりやれーっ! ○○ーっ!!」
と名前をよんだ。西方ヒョロリ君(仮)のお爺さんか。
「しかし相手のデブの子、2年生でよくあそこまで太ったなぁ。○○ーっ!! 負けるなーっ!!」
お爺さん、声がデカい上に周りを気にすることなくデブデブと連呼するので、私は他人事ながらその東方ポッチャリ君(仮)のご両親が聞いてるんじゃないかと思ってヒヤヒヤした。
結果、ヒョロリ君は瞬殺だった。その時、爺さんは、
「チクショー! ちょっとデブすぎたなぁ、あのデブ……」
ノーデリカシー爺さん。