「現代人は、食物繊維の摂取量が圧倒的に足りていない。その原因は、雑穀を食べる昔の習慣が、白米やパンを食べる食生活に変化したからです。食物繊維といえば、野菜からとるものと考える人が多いですが、実は野菜だけでは補えない種類の食物繊維があります。もち麦は、野菜以上にバランス良く、食物繊維を摂取することができるのです」
食物繊維には、「不溶性」と「水溶性」の2種類がある。不溶性は主に、野菜やキノコ、豆類などに含まれており、腸内の水分を吸ってふくらみ、排便を促すため、便秘改善につながるといわれる。対して、水溶性は、糖質の消化・吸収をゆるやかにし、血糖値の急上昇を防ぐとともに、脂質の吸収を穏やかにする作用がある。さらに、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増やす効果もあるため、腸内環境改善にも役立つとされている。もち麦は、この水溶性食物繊維を豊富に含むことが特徴だ。
「“β‐グルカン”と呼ばれる水溶性食物繊維の一種が、血糖値の上昇の抑制やコレステロールの分解、整腸作用など、多くのパワーを持っています。もち麦には、このβ‐グルカンを多く含む品種が多いのです」(青江教授)
「便秘外来」を持つ小林メディカルクリニック東京の小林暁子院長も、深刻な便秘に悩む患者に対し、もち麦に代表される、水溶性食物繊維が豊富な食材をとるよう薦めているという。
「下剤なしでは排便できないというほど深刻な悩みを持つ人も多いですが、便秘改善には日々の食生活が何より大切です。便秘で通院し、もち麦を食べるうちに『おなか回りがすっきりした』『体が軽くなった』などダイエットにつながったという声もよく聞かれます」
どれくらいの期間食べると、効果が表れるのだろうか。前出の青江教授は、「3カ月が目安」と話す。
「朝と夜の1日2食を、もち麦ご飯に置き換えるのがお薦めです。1日1食しかとれない場合には、体が動き始める朝食にとるのが良い。食欲を調節する働きもあるので、食べすぎを防げます。一度にたくさんではなく、毎日続けることが大事。食物繊維をとり続けることで、脂肪がつきにくい体質に変化していきます」
とはいえ、1日1~2食、もち麦ご飯を食べるだけで本当に良いのだろうか。ダイエットに不可欠な運動の必要性について青江教授に聞くと、「燃焼系メカニズムのダイエットではないので、運動を併用しなくてもOKです」ときっぱり。そしてこう続けた。
「ホリエモン(堀江貴文さん)が仮出所したとき(2013年3月)、激痩せっぷりが話題になりましたよね? 実は、刑務所で出されるご飯は押し麦を使った麦ご飯。もちろん規則正しい生活や体を動かしていることも起因していると思いますが、大麦効果が絶大であることを物語っています」
押し麦よりさらに食物繊維が豊富なもち麦ならなおさら、というわけだ。
※週刊朝日 2016年6月3日号より抜粋