しかし、最近では沖縄がヘイトスピーチの標的にさらされているのだ。2013年1月、沖縄県の全自治体の首長らがオスプレイ配備反対の建白書を携えて上京したときのことだ。銀座をパレードすると、沿道の排外主義団体から「売国奴」などと罵声を浴びせられた。沖縄県名護市のキャンプ・シュワブのゲート前や辺野古の海のテント村にも、ヘイトスピーチや襲撃事件がくり返されている。
有田氏が続けて言う。
「法律は国籍を根拠としているが、民族や性別などの属性も当然含むと考えるべきだ。従って沖縄に対する侮蔑的発言も許さない」
本誌は、長尾氏に取材を申し込んだが、「どなたの取材もお受けしていない」との回答だった。
沖縄平和運動センター議長の山城博治氏が怒る。
「事件や事故を起こし、沖縄県民に実害を与え続ける米軍に『出ていけ』と言ったらヘイトになるのか」
沖縄での米軍人・軍属による事件・事故は、現在でも年間100件を超える。
「殺人事件が起き、強姦され、年中オスプレイや戦闘機が爆音をあげて飛び回って、県民の生命は脅かされています。米軍擁護の一方で、うめきのような抗議さえ許さないというのは政治の堕落です」(山城氏)
前琉球新報社社長で、軍事研究家の高嶺朝一氏もこう警告する。
「私は、国民の言論の自由を規制しかねない法律に反対の立場です。ヘイトスピーチには現行法でも厳しい対応は可能だと思う。強きを助け、弱きをくじくような現政権が法を運営するわけですから、拡大解釈がなされないようにきちんと縛りをかけてほしいですね」
ヘイトスピーチ法案を曲解し、自分勝手に解釈する姑息な政治家は、政界から早々に退場願いたい。
※週刊朝日 2016年5月20日号