「ダニがアレルギー疾患の原因なら、アレルゲンであるダニへの過剰な免疫反応を抑えることが最も効果のある治療です。2015年にようやく登場したのが、2種類のダニからアレルゲンエキスを抽出した混合液剤なのです」(相良医師)

 ダニアレルギーのアレルゲン免疫療法は、ダニアレルゲンのエキスを皮下注射する「皮下免疫療法」と、ダニアレルゲンエキスを舌下に投与する「舌下免疫療法」がある。

 国内では、前者は15年4月に発売。後者は2種類(商品名「アシテア」と「ミティキュア」)あり、それぞれ15年11月と12月に発売された。

 皮下免疫療法は、ダニアレルギーによるアレルギー性鼻炎と、気管支喘息のうちアトピー型喘息の患者に使われ、累積の注射量が効果の期待できる「維持量」に達すれば、2~4週間ごとの通院になる。

 一方、舌下免疫療法は、アレルギー性鼻炎の患者に使われる。1日1回舌の下に錠剤を投与して溶かす。投与は毎日必要だが、煩雑さや注射による痛み、定期的な通院などを考えると、患者の負担は皮下免疫療法より少ない。どちらも、70%前後の患者に効果が認められている。

 アレルゲン免疫療法の最大のネックは、治療に時間がかかることだ。

「少なくとも3~5年以上の継続治療が必要です。どれくらいの効果を得られるかは、事前にはわかりません。それを十分に理解した上で治療を受けていただきます」(同)

 もちろん、治療前には、ダニアレルギーによるアレルギー疾患かどうかを検査で調べなくてはならない。

 また、副反応として、皮下免疫療法の注射100万回に1回、アナフィラキシーショックが起こるとされ、喘息発作の誘発やじんましんなどもある。舌下免疫療法でのアナフィラキシーショックは国内ではゼロだが、海外では1億回の投与で1回生じたという報告がある。

「それでも、アレルギー疾患が根治する可能性が出てきたのですから、私は症状の程度を問わず、ダニアレルギーが直接原因となっている患者さんにはお勧めしています」(同)

 ハウスダストのアレルゲン免疫療法では十分な効果がなかった人も、ダニに特化したエキスなら症状軽減が期待できるという。

週刊朝日 2016年3月11日号より抜粋