「医学部医学科を志望した生徒は、提出資料も充実した内容でしたし、面接等も十分な手応えがあったが、センター試験の点数が届かなかったのです。理学部を受験した生徒は、センター試験では十分な点数を取りましたが、面接等で実力を発揮できなかったようです」
文部科学省は、大学入試を総合評価に変え、同時に高校教育と大学教育も大転換する「高大接続改革」に力を入れている。
「その議論のなかでも言われている『多面的・総合的評価』とはこういうものなのかと、改めて実感しました」
今回、推薦要件に国際科学オリンピックの受賞歴が例示されていたため、「“スーパー高校生”が応募する入試」というイメージが先行した。教育ジャーナリストの小林哲夫さんは、
「ハーバード大をはじめとする海外のトップ大学などへの頭脳流出を防ぐために、こうした推薦要件になっているとみたほうがいい」
と分析する。実際のメダリストたちの合否はどうだったのか。
高知学芸のように合格したケースもあるが、不合格だった高校もある。河合塾教育情報部の近藤治さんは、
「実績は確かに大事ですが、『過去』のもの。一般的な推薦入試同様、入学後にやりたい研究や意欲を重視して選抜したのだと思います」
小林さんも、こう話す。
「メダリストたちは一般入試でも合格できる頭脳の持ち主です」
東大の推薦入試は、さまざまなタイプの学生を集めることで学部教育の活性化を図ろうとするものだ。背景には、女子学生比率は2割弱と少なく、特定の進学校出身者ばかりで、出身も関東が半分以上と、合格者が偏っている現状への危惧がある。
※週刊朝日 2016年2月26日号より抜粋