カフェインは頭をスッキリさせるなどの健康効果がある一方で、多量摂取により死に至る危険性も指摘されている。九州地方に住む20代の男性がカフェイン中毒死したという報道があったのは昨年12月。受験をきっかけにカフェイン入り飲料にはまる例もあり、専門家は危機感を募らせる。
なぜカフェインの過剰摂取は命にかかわるのか。カフェインの薬理作用に詳しい東京福祉大学短期大学部の栗原久教授(神経行動薬理学)は「カフェインの興奮作用が問題」と話す。
「カフェインは脳や心臓、腎臓などに作用して集中力を高め、眠気を覚まし、運動能力を上げる。利尿作用もあります。一方、作用が強く出すぎると、手の震えやけいれん、目がチカチカする視覚障害、不眠が現れたり、心臓が激しく収縮して不整脈が起こったりします。カフェインによる中毒死は、主に不整脈によって起こると考えられています」(栗原教授)
ライフスタイルや仕事の形態が多様になり、勉強中や仕事中の眠気覚ましにカフェイン入りドリンクを飲む人も多い。
カフェイン入りドリンクには、清涼飲料水と医薬品、医薬部外品がある。「ファイト一発!」などでおなじみの栄養ドリンク剤は医薬部外品。医薬品医療機器法(旧薬事法)で規定があり、カフェイン量は100ミリリットル当たり50ミリグラムまでとなっている。
意外だが、こうした規定がないのが清涼飲料水だ。“エナジードリンク”(カフェインやアルギニンなどの成分入り炭酸飲料)のカフェイン量は、100グラム当たり32~70ミリグラム。1本飲みきると80~180ミリグラムのカフェインを摂取する。眠気防止系ドリンクはもっとカフェイン量が多い。
「コーヒーはダメだけれど、清涼飲料水なら体に悪くないと思うのでしょう。中学生が高校受験をきっかけに飲み始める例もあるようです」(福岡大学医学部法医学教室の久保真一教授)
科学ジャーナリストの植田武智さんは、「コーヒーと違い、飲み口がいいのでたくさん飲めてしまうのが問題では?」と指摘、アメリカの14歳の少女の中毒死例を挙げる。