田:ものすごく不器用です。不器用だから、できることが非常に限られている。最初に勤めた日本交通公社ではひどかった。まず、丸ビルの中のほうの営業所で、切符を売ってお客さんとやりとりしていたが、それがまるでダメ。そこで定期券の配達にまわされたが、失敗ばかり。次は東京駅の中の案内所。でも、どんどん悪くなった。仕事がきらいなんですよ。

帯:それはストレスが大きかったですかね。

田:丸ビルの中に入るのがいやなので、まわりを2回ぐらいまわって会社に「今日はちょっと体調が悪いから」って電話する。いわゆる出社拒否です。その後、岩波映画製作所を経て、東京12チャンネル(現テレビ東京)に入れたのがよかった。僕の青春っていうのは、それからです。

帯:天職を得たわけですね。

田:不器用なのがわかっているから、できることしか、やらない。いや、できることしか、できないんです。器用な人はだいたい損をしていますよね。何でもできるから、ついやっちゃう。僕はできないからやれないですよ。

帯:不器用で、唯一、人と会うのが好きだから、それだけをやっているというわけですか。

田:そうです。だから僕のやっているのは趣味で、仕事ではない。仕事とは思っていないです。仕事じゃないから人と会うときにギャラなんて考えない。原稿料も考えない。

週刊朝日  2016年1月29日号より抜粋

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