「運営費交付金が削減されたので、三重大でも計画的に教員数を減らしました。例えば医学部では1講座4人の教員がいたのが3人になった。教員が減り、研究時間が減っていくので、先生たちの疲弊感はますます高まっています」
運営費交付金が減ることで教員が減り、ひとり当たりの負荷が高まり、研究時間が確保しづらくなった。その結果、論文数の減少につながったというわけだ。
運営費交付金が減る一方で、研究テーマを選別して研究予算を配分する競争的資金は倍以上増加。ここ10年で国立大学の運営費交付金は約1695億円減り、競争的資金は約2465億円も増加している。競争的資金はテーマや成果によって配分が決まるため、競争が促され、効率化が進み、結果が出せるというのが国のもくろみだった。
だが、研究者を大学で安定して雇用できる運営費交付金と異なり、競争的資金では3~5年のプロジェクトごとの雇用になる上、プロジェクトのテーマの研究しかできないなど自由度が低い。12年にノーベル賞を受賞した山中伸弥氏が率いる京都大学iPS細胞研究所でも、運営資金の多くは競争的資金が占め、職員の約9割が任期付きの雇用だという。iPS細胞研究でさえ、この状況なのだ。
かつて国の大学院重点化施策で増え続けていた博士研究員(ポスドク)や博士課程大学院生も、近年は減少傾向だ。豊田学長はこう懸念する。
「法人化で大学の裁量が増すということだったが、実際には(国の予算配分によって)研究機能が縮小しました。現在国が進めている大学改革では、機能どころか組織の縮小段階に入っています」
法人化以降、国立大学は6年ごとに中期計画を策定し国の評価を受ける。現在策定中の計画では、目標の設定によって国からの予算配分が左右される仕組みだ。
今年4月には改正学校教育法などが施行され、大学学長の権限が強化されたと言われるが、逆に大学の自治は奪われつつあるのが現実だという。前出の平川教授はこう懸念する。
「国からの評価と予算に、大学、学長はより縛られるようになってきています。これまで大学の自治は教授会を中心として行われてきたが、学長が国に予算で首根っこを押さえられ、国の方針に振り回されてしまう危険性がある」
※週刊朝日 2015年11月13日号より抜粋