熱戦が繰り広げられている日本シリーズ。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、ヤクルトソフトバンクを攻略する方法をこう解説する。

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 このコラムを執筆している時点では、24日開幕予定の日本シリーズはまだ始まっていない。第1戦、第2戦と、どんな戦いになっているかは知る由もないが、自分なりの予想も交えて話を進めていきたい。

 私は、ソフトバンクが4勝1敗、4勝2敗あたりで勝つとにらんでいる。打線の破壊力も先発投手の質もソフトバンクのほうが上。ヤクルトのストロングポイントとなっている救援陣に関しても、ソフトバンクのほうがフレッシュな状態だ。

 ソフトバンクは、シーズン中に大差をつけて優勝。工藤監督は救援陣の登板をおおむね60試合以下に抑え、クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージも3試合で済んだ。疲労度の点で違いがある。

 ただ、予想はあくまで予想だ。工藤監督は私の現役時代から親交があり、期待もしている。だが、ワンサイドではつまらない。ヤクルトが四つ勝つために何が必要かを考えたい。

 何はさておき、ソフトバンク打線を抑え込むことだ。ヤクルトバッテリーは、巨人とのCSで、どちらかといえば「走者をいくら出しても本塁にかえさなければいい」という攻め方をしていた。それは、貧打にあえぐ巨人だからこそ有効だった策だ。どこからでもつながるソフトバンク打線を相手にするなら、抑えるべき打者を徹底して抑え込み、打線を分断したい。

 抑えるべき打者とは、3番の柳田と、6番の松田だ。

 
 4番内川には、抑えるセオリーが見当たらない。どの球種、コースに対しても自分の打撃をしてくるし、柔らかさもある。5番の李大浩も、逆方向に大きな当たりを打てる。両者には、ある程度打たれることを想定に入れる必要がある。

 ただ、柳田、松田は足を上げてフルスイングをしてくる。ボールと距離を取りにくく、自分本来のスイングをしにくい内角高めを徹底的に突くことだ。

 打者全員をマークすることはバッテリーに極度の負担を強いる。柳田、松田については「ワンポイントで救援陣を挟んでもいいから、抑え込む」といったメリハリが必要になる。」

 まず、内川と李の前にいる柳田を抑える。内川、李には単打を打たれてもOK。ピンチを迎えても松田を抑える。その繰り返しで失点を防いでもらいたい。

 投手陣が粘っているうちに、打撃陣が先制点を奪いたい。ソフトバンクの投手陣は先発も救援もパワーピッチャーが多い。150キロを超す速球で押してくる。力負けをせず、リードする展開に持ち込み、心にゆとりを持つといい。目に見えない重圧はある。CSで敗れたロッテの打者も、追い込まれてから力んでいた。

 ヤクルトは2番の川端がある程度計算できる。好機で山田、畠山に一本が出るか。その次のカギがバレンティン。シーズン終盤からCSにかけての打席では、外角球にバットが届いていなかった。本来の打撃がどれだけ戻っているかだ。

 2年前の日本シリーズ、楽天─巨人を思い出してほしい。楽天は、第1戦でシーズン24勝0敗の田中でなく、則本を先発させ、第5戦以降は救援に回した。そんな柔軟な投手起用も、真中監督には求められるだろう。野球賭博など暗いニュースも出ているが、「野球はやっぱり素晴らしい」とファンに思ってもらえるような熱戦を期待したい。

週刊朝日 2015年11月6日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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