

「日本とアメリカのトマトケチャップって、実はいろいろ違うんだよね」
食品メーカーに勤務する友人が言った。彼が言うには、アメリカではフライドポテトやホットドッグなど、基本的に「かける」ためにトマトケチャップを使う。「日本のトマトケチャップは、炒めて使う洋食文化とともに育ってきてるんだよね」
炒めたときにおいしさが出るよう日本のケチャップには独自の改良が加えられてきた。
日本のトマトケチャップの雄・カゴメが、チキンライス用調味料「まぜて1分チキンライス用ソース」を8月に発売した。最大の特徴は、「混ぜるだけ」。
「チキンのうまみと炒めた玉ねぎの香りで、温かいご飯に混ぜるだけでトマトケチャップで炒めたような味わいのチキンライスを作ることができます」
と、カゴメ広報グループの仲村亮さんが言う。わざわざ書くまでもないが、普通のチキンライスは、具材とご飯をケチャップで炒めてできあがる。それが、炒めずできる。彦摩呂なら、「チキンライスの産業革命や~」とか言ってくれるだろうか。
さっそく「混ぜて」みた。混ぜているだけで、トマトソースのいい香りがしてくる。具はなし。それなのに、口に入れると玉ねぎの甘みやチキンの香りが広がる。ケチャップを混ぜただけではこうはならない。ちゃんとチキンライス。むしろ、フライパンでただ炒めるよりも、おいしいかもしれない。しかも、
「気になるキッチンや服への油はねも起こりません」
チキンライスは、実はお弁当での需要が高いそうだ。仲村さんは言う。
「キャラ弁や塾弁といった子ども向け弁当や、節約志向を背景にした大人のお弁当持参率が増加していて、お弁当周辺の市場は活況傾向にあるんです」
この商品の手軽さや、冷めてもおいしい味つけも、それが背景のひとつだ。
「憧れの洋食屋の味」から、「お母さんのお弁当の味」へ。将来そんな郷愁を感じる世代が、新しく育つ。
(太田サトル)
※週刊朝日 2015年10月2日号