住んだことはないものの、幼いころから通っていた祖父母の元へ、親世代を飛び越えて帰る「孫ターン」が増えているという。
内閣府が行った世論調査(2014年)によると、都市部に在住する20歳以上の男女の約3割が「農山漁村地域に定住してみたい」と回答。05年の前回比で11ポイント増加と、地方への意識の高まりは一目瞭然だ。
国もそれを後押しする。田舎に移り住み農業や観光など地域振興に取り組む「地域おこし協力隊」は、全国各地に1511人(14年度)。高市早苗総務相は、「都会から地方へ人が流れ、地域が元気になっていく」と鼻息が荒い。16年度には3千人に倍増させる方針を掲げている。
一連の動きに対し、全国各地の中山間地をまわる農山漁村文化協会編集局次長の甲斐良治さんは「ただ人口のためでなく、一人ひとりの豊かな人生のための定住策である必要があります」と話す。
島根県邑南(おおなん)町も山口県周防大島町も、むやみに移住者を引き込むような姿は見られない。
周防大島町で官民連携して移住者サポートをする周防大島町定住促進協議会の泉谷勝敏(いずたにかつとし)さん(41)は、新規の移住者を「お客さま」のようにもてなさないという。
「住民同士であつれきが生まれて、もとから住む人が町外に出てしまったら本末転倒です。移住者を増やすのと同時に、住民を町外に出さない配慮も不可欠です」と話す。