「病気やケガが重いときは救急車を呼び、病院から福祉事務所につなげることもあります。限界までがんばっている方が多いのです」と森川さん。
ガード下には、段ボールを敷いて眠る男性が何人かいた。その横にボランティアがおにぎりを置く。
この日、森川さんの隣を歩いていたのはともちゃん(通称・54歳)。昨年、歩道橋で若者に追いかけられているときに偶然森川さんと会い、保護されたホームレス経験者だ。現在はグループホームに入居している。
ホームレスになると、健康だった人でも路上生活へ至る過程で抑うつ状態になることもある。森川さんの調べ(池袋)では、ホームレスの3割に知的障害が、4割にうつ病や統合失調症など精神疾患があることがわかった。路上から抜け出しにくい要因にもなる。
「厚労省は“ホームレスが減った”と発表しているのですが、鉄のフェンスを張ったりベンチを撤去したりして、彼らを見えなくしたに過ぎない。一人ひとりの背景が違う。国がそこを見ようとしないのも問題です」
ホームレスとは家(ハウス)がない状態でなく、安心して生きる場(ホーム)がない状態だ、と森川さん。
「どうしたら皆が生きやすい社会になるか。そればかり考えるんです」
優しく微笑み、夜回りを続けた。
※週刊朝日 2015年7月3日号